何で消費税を上げたがるのだろう？| 素人向けの解説ってのはやっかいだねえ

私には本当に不思議なことなのですが、世の中には消費税を上げたくて仕方がない人がいるようです。財務省とその取り巻きのような人たちなら、増税をしたがるのは理解できるのですけどね。全く関係の無い人でも、増税やむなしと思っている人がいます。

そういう人の中には、一般の人たちに向けた易しい解説をしたがる人もいます。増税しないとどんな悲惨な未来が待っているかを説いてまわるわけですね。

これらの批判が合理的なものであれば、まあ問題は無いでしょう。でも、増税が必要と言う結論ありきで、そのゴールに向かって書かれているものも多いのです。そして、自分の主張を通すのに不都合な部分は意図的に除かれていたり、論理が飛躍していたりするから厄介です。こういったことは素人には気づき難いですからね。

で、そんな記事をYahoo!ニュースの中で見つけました。次の記事です。

■ 消費税引き上げはなぜ必要なの？／木暮太一のやさしい経済ニュース解説（THE PAGE）

いきなりすごい違和感を感じました

この記事は自問自答するスタイルで書かれているのですが、一番最初の問いと答えは次のようになっています。

アベノミクスの「3本目の矢」である、成長戦略や改革を、ぜひ期待したいです。 ―――「何が一番大事なの？」 一番を決めることは難しいですが、「消費税引き上げ」ができるかどうかは、大きなポイントになるでしょう。

これを読んだ時の私の違和感を感じてもらうことが出来るでしょうか。アベノミクスの第３の矢の話になった時に、「消費税の引き上げ」というのは滅茶苦茶と言ってもいいような話なのです。

だって第３の矢って、本来は成長戦略の話ですからね。そして、増税は成長戦略とは反対のものです。ですから、「何で第３の矢が増税？」と思ったわけです。まさか増税すると成長するなんてお考えではないと思いますけど。

実質金利は無視ですか？

他にも色々と突っ込みどころはあるのですが、もう一つだけ。

また、以前も「アベノミクスで金利上昇なぜ？」という記事で解説しましたが、国債（債券）の値段が下がると、金利が上昇します。 住宅ローン金利、自動車ローン、中小企業が借りる銀行金利・・・ 国債の値段が下がるということは、これらの金利がすべて上がるということです。 消費税増税をやめれば、目先は楽かもしれません。しかし、金利が高騰し、中小企業の資金繰り悪化する可能性も視野にいれると、もっと大変なことになることも十分考えられます。

記事の最後の部分です。消費税率を上げないと国債の価格が下がる、という主張に続く部分ですね。まあ、この主張もどうかと思いますが、指摘しだすとキリが無いので今回は割愛します。

まず、最初に指摘しておきたいのが、国債の価格と既に入っている住宅ローンには直接的な関係は無いという点です。

固定金利で住宅ローンを借りている場合は、その後金利がどうなろうと返済額は増えませんよね。ですから、国債の価格が下がっても、固定金利の場合は影響は出ません。少なくとも、既にローンを組んでいる人には無関係の話です。

ということは、国債の価格と返済額が関係するとすれば、変動型で借りている場合ということになります。でも、実は、変動型で借りている場合も国債との価格と金利には直接的な関係は無いのです。なぜかと言うと、住宅ローンは短期金利だからです。一方、国債価格と直接的に結びついているのは長期金利です。今回の説明では、この２つを混同しているようです。

もちろん、長期金利と短期金利に全く関係が無いかというと、そうではありませんけどね。短期金利なら日銀がある程度コントロールできるので、この方が言うようなリスクがそれほど大きいとも思えません。少なくとも、説明の大事な部分を端折っている感じはありますね。

これは自動車ローンでも同じことでしょう。

この部分に関しては、もう一つ端折られている話があります。金利には名目金利と実質金利があるのですが、その部分を無視して名目金利のことについてしか書いていないのです。

名目金利が上がっても、実質金利が下がっていれば、経済活動には影響は無いはずです。そういう部分を無視して、都合の良い結論だけを書くのは、ちょっとどうなのかなあ。

分かりやすい○○には注意が必要なのかな

この手の分かりやすさを重視したものには、注意が必要なのかもしれませんね。分かりやすさを優先すると称して、自分たちに都合が悪い部分をスキップすることもありえますから。

ただ難しいのが、注意をするにしても素人では限界がありますよね。相手の肩書きが立派であればあるほど、無茶な説明でも信じてしまうかもしれません。